2012年5月1日火曜日

姫路 心療内科|前田クリニック 躁うつ病(双極性障害)


躁うつ病での第一選択薬が気分安定剤であるのに対して、うつ病での第一選択薬はSSRIを中心とする抗うつ薬です。 ここでは、うつ病に用いられる中心的な薬物(躁うつ病には使ってはいけない)抗うつ薬について、またそのほかの薬とともに補足的に説明します。
初発症状がうつ状態の患者さんには、通常、SSRIのパロキセチン(パキシル)、フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、セルトラリン(ジェイゾロフト)のいずれかが処方されるでしょう。 飲みはじめて比較的早い時期に、「下痢がひどくなった」、「吐き気がする」、「頭痛がひどい」といった訴えが患者さんから出た場合、患者さんと薬との相性が良くないと判断し、同じ系統の別の薬に変えて様子を見る場合があります。この原因については、薬物代謝酵素の代謝能の個人差が原因となることもあります。 たとえば、アルコールを代謝する酵素のひとつであるALDH2が弱い人は、1杯のお酒でも顔が赤くなり、吐き気や頭痛があらわれるのと同じです。また、薬が体質に合わないことがあるということも、たしかにあります。 それでも、この時点で処方する抗うつ薬は、基本的には1種類にするべきです。その処方で1〜2ヵ月様子を見て、うつが治らない、余計悪くなっている場合には、たとえばパキシルからルボックスに変更するといった具合に、系統の違う薬を使うことが多いようです。
SSRIからSNRIのミルナシプラン(トレドミン)などに変えるのも、その一例です。そのほか、三環系抗うつ薬のアミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミンや、スルピリド(ドグマチール、ベタマックなど)もその次の選択肢に考えられます。うつ病の不安症状、パニック発作や理由のない漠然とした激しい不安には、強迫症状にも有効とされるSSRI、もしくはほかのアルプラゾラムやプロナゼパムなどの抗不安薬などを使うことがあります。 躁うつ病とは違い、うつ病ではこのような薬の使い方もやむを得ないと思います。


副鼻腔炎のための自然療法

躁うつ病では、基本的に抗不安薬は気分の波を大きくしてしまい、かえって不安定になるので逆効果です。 また、うつ病相のイライラ時には、定型抗精神病薬のレボメプロマジン(レボトミン)が頓服としてよく使われます。 しかし、躁うつ病のイライラ時には、幼児的な言動になり、べたべた甘えるような退行傾向があらわれることが指摘されています。
そのようなときは、非定型抗精神病薬のオランザピン(ジプレキサ)やゾテピン(ロドピン)がおすすめです。 このようにして、うつ病の経過を見ているうちに、もし先述のかくれ躁うつ病が見つかれば、躁うつ病に極性診断変更を行うべきです。
また、難治性のうつ病や、多少良くなったように見えてもすぐ再発するような遷延化したうつ病の場合も、「かくれ躁うつ病」ではないかとよく注意し、経過を観察することが重要です。

うつ症状には慎重に抗うつ薬を処方

躁うつ病のうつ症状には、気分安定剤をベースに、SSRIやスルピリド(ドグマチール)などの抗うつ薬を併用する。 オーグメンテーション療法(薬理効果を増強する多剤併用)で経過が良好になるケースが多く見られます。 現状では、躁うつ病の初発症状がうつ状態の場合、最初に処方されるのは抗うつ薬だろうと推測されます。
抗うつ薬に関しては、従来のクロミプラミン(アナフラニール)やアミトリプチリン(トリプタノール)などの三環型抗うつ薬に代わって、SSRIが主流になりました。 パロキセチン(パキシル)やフルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、セルトラリン(ジェイゾロフト)です。 さらにSNRIといわれる新しいタイプの抗うつ薬であるミルナシプラン(トレドミン)が発売されました。
気分安定剤の炭酸リチウムは、抗うつ薬の抗うつ作用を増強するので、躁うつ病のうつ状態に、これらSSRIやSNRIを炭酸リチウムに上乗せして使用することで、功を奏することがあります。 ただし、服薬量には十分注意しましょう。


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不安症状には抗精神病薬

躁うつ病の不安・焦燥感、攻撃性や不機嫌な高揚感に対する治療には、オランザピン(ジプレキサ)などの非定型抗精神病薬を使った多剤併用療法が効果的であると考えます。
不安を頻繁に訴える患者さんに、むやみに抗不安薬を併用すると、薬物依存の原因となったり、不機嫌な高揚感を増悪させ、余計に気分を不安定化させるため、避けるべきです。 躁うつ病の不安には、定型抗精神病薬のレボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミンなど)などが癖になりにくいのでおすすめです。
躁うつ病の不安には非定型抗精神病薬を処方し、イライラを抑えることをおすすめします。 抗精神病薬は統合失調症の治療薬ですが、社会的引きこもりなどを起こしにくく、躁うつ病の不安・焦燥といったイライラ・興奮を伴う認知機能の異常や、思考的視野の狭小(些細なことでキレたり根にもったりする行為や、悲観的で投げやりな思考)にも効果があります。

躁うつ病の治療薬・炭酸リチウムについて

躁うつ病の治療において、気分を安定させる目的で用いられる炭酸リチウム(リーマス、リチオマールなど)があります。
この薬は効果が出る量と、副作用が発生する量の差があまりはなれていないので、医師による管理が重要になってくる薬です。 手が震えたり、口が渇いたり、眠気、ふらつき、吐き気、下痢などの副作用があらわれることがあります。
医師は患者さんにもっとも有効な服薬量を知り、副作用を防ぐために定期的に採血をし、血中濃度をチェックする必要があります。


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躁うつ病における気分安定剤と抗うつ薬の併用について

躁うつ病の治療の基本は、気分安定剤の処方です。 あくまでそれを前提に、気分安定剤とSSRIあるいはSNRIといった抗うつ薬との併用について私見を述べます。 たとえば躁うつ病の患者さんが、炭酸リチウムを基本に薬物療法を続けてきて、ある程度気分の波が落ち着いてきたとします。
しかし本人としては「今ひとつ、うつ状態で余裕がない」、「意欲がわかない」、「眠れない日がたまにある」、「翌日だるくてつらい」という状態だったとします。このような場合に、抗うつ薬が必要かどうかです。
私が思うに、気分安定剤で不安定だった気分の波が小さくなった、あるいは不機嫌に高揚していた気分が落ち着いてきたが、「やる気が出ない、つらい」という状況でも、安易に抗うつ薬を併用すべきでないと考えます。 まずは日常生活でのアドバイスをしたうえで、様子を見ることをおすすめします。
私なら「ひとつの仕事内容にこだわらないで、いくつかの目標を立てて、やりやすいものから短期集中で断続的にやっていったらどうですか?あるいはいくつかのことを同時進行で、ながら族的にやったらどうですか?」と束縛のないやり方で、自由度が増すようにアドバイスします。
つまり、日々の生活のなかで躁うつ病の患者さんが余裕をもてるように、あるいは「型にはめられて窮屈だ」と感じることがないように過ごせるようすすめてみます。
そうして様子を見ながら、どうしてもうつ状態がひどい場合には、やむを得ずSSRIを使うこともあります。 ただし、SSRI、SNRIや三環系抗うつ薬は、うつ病ではたしかに有効性が認められていますが、躁うつ病のうつ状態に対する有効性ははっきりとは認められていません。
躁うつ病の場合は、あくまで気分安定剤を基盤にし、抗うつ薬はその補助薬として上乗せして使用する程度のものです。 そして炭酸リチウムに抗うつ薬を上乗せする場合、薬物間の相互作用のため、抗うつ作用が増強されるといわれているので、基本的に抗うつ薬の大量投与は必要ありません。


躁うつ病の混合状態に、なぜ抗不安薬がいけないのか

さらに気分の波が大きくなり、ブレーキが利かない状態になることも ベンゾジアゼピン系と総称される、ある特定の構造式をもつ薬剤群があります。 それらは抗不安薬や睡眠薬として使われています。 このベンゾジアゼピン系の薬物は、以前から、アルコールと併用したり、高齢者が服用したとき、不安や些細なことに敏感に反応する易刺激性などが出ることがあると指摘されています。
ある報告では、このベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、効き目が強く作用時間の短いものほど依存性が強く、毎日同じ量を飲んでいると徐々に効きが悪くなりやすいといわれています。 つまり毎日飲み続け、同じ効果を維持するためには、必然的に服薬量が増えるといえます。
躁うつ病気質の人は、薬物依存・乱用などを起こしやすいのですが、とくにベンゾジアゼピンのような飲み心地の良い抗不安薬は、はじめに不安を訴えて処方されるのに、いつの間にか患者さんが「この薬がなければ余計に不安になる」、「余分に持っていないと心配だ」という状態になります。 これはすでに、薬物依存症に一歩踏み入れている状態です。
躁うつ病でベンゾジアゼピン系の抗不安薬の依存に陥ると、さらに気分の波が大きくなって不機嫌な高揚感でイライラしたり、不安定さがひどくなったりして、その結果リストカットなどの自傷行為や摂食障害、あるいは病的な賭博や買い物などの衝動が止まらなくなり、理性のブレーキが利かなくなるのです。
こういうケースでは、まずベンゾジアゼピン系の抗不安薬、睡眠薬を多種類、大量に服用していないかチェックし、もしそうであれば早急に減量していかねばなりません。 減量した後、中止すれば自傷行為や摂食障害の症状が改善され、精神的にも安定してきます。
ただし、これらの薬はいったん依存症に陥るとなかなか止められませんし、減らしにくいのが特徴です。 したがって、躁うつ病の気質の人のリストカットや食べ吐きを防ぐ最良の方法は、次のとおりです。


  • 最初からむやみに抗不安薬を飲まない
  • (抗不安薬も睡眠薬も含めて)複数のベンゾジアゼピン系の薬を飲まない
  • 気分の波を小さくする気分安定剤を飲む

なお、うつ病の不安症状で抗不安薬を処方する場合でも、基本は不安なときだけ飲んだり、飲む日を決める(頓服)か、期限限定(たとえば「今月はどうしても決済などで忙しいので、今月だけ飲む」など)にするべきです。
気分の波の大きい人は、抗不安薬だけではなく、アルコールや覚醒剤などの中枢刺激剤への親和性も高いといわれています。
日中、場所や状況を選ばず起きる強い眠気を主な症状とする睡眠障害(ナルコレプシー)の治療に使われるリタリンという薬は、ひと昔前には難治性のうつ病に使われていましたが、依存性・耐性が覚醒剤と同じくらい強く、服用しているうちにかえって不安焦燥感が増悪して、結局は自殺者が増えたため、今ではうつ病の治療薬としては使用が禁止されています。

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